「勝ち組」と「負け組」は、2024/2025年度連邦予算案

誰もが何か得るものがある(There's something for everyone)――。そんなスローガンで発表された2024/2025年度連邦予算案。内容を見ていきましょう。

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Credit: SBS/AAP

Key Points
  • 光熱費に対するリベート300オーストラリアドルの支給
  • 女性の健康に1億6000万オーストラリアドル以上を拠出
  • コンサルタント・請負業者・労働者派遣業者(labour hire)への政府支出の縮小
5月14日に労働党のアルバニージー政権が発表した2024/2025年度連邦予算案。恩恵を受ける「勝ち組」は誰で、期待した恩恵がなかった「負け組」は誰でしょうか。リストを作りました。

「勝ち組」は?

納税者

すでに発表済の所得税減税ステージスリーの改正により、納税者およそ1360万人の税負担が軽減されます。受け取った収入をより多く手元に残しておけます。

連邦政府のジム・チャーマーズ蔵相によると、平均で週当たり38ドル分の減税。「生活コスト高による負担の軽減につながり(中略)女性を支援し、労働力の供給を増やすことにつながります」と述べました。
所得税減税のステージスリーは、前の保守連合政権が法制化した税制改革の最終段階です。元々は税率区分を一つ減らし、年収4万5000ドルから20万ドルの人の所得税率を一律で30%にするというものでした。

今回の改正では、現存するすべての税率区分が減税の対象です。税率32.5%の区分を30%にし、それぞれの税率区分の収入の上限を引き上げます。

世帯

各世帯に対して、(リンク先は英語)が支給されます。

チャーマーズ蔵相は「オーストラリアの家族やビジネスが(生活コストの上昇の)痛みを感じていることを知っています。だからこそ私たちは支援策を盛り込むことを決めました」と述べました。
A phone with a screen lit next to cash on a table
From 1 July, every Australian household will receive an energy bill rebate. Credit: AAP
一部の賃借人

連邦予算案では、今後5年間に20億オーストラリアドル近くを投じ、家賃補助(Rent Assistance)の最大レートを追加で10%引き上げます

これは昨年9月に発表された15%の引き上げに追加して実施されます。

チャーマーズ蔵相によると、家賃補助の最大レートが2年度連続で引き上げられるのは、30年以上ぶりとなります。

今回の家賃補助の最大レートの引き上げでは、例えば、子どもを1~2人持つシングルペアレントまたはカップルは、補助額が二週間当たり70ドル以上引き上げられることになります。

患者

連邦政府は、すべての人が今までよりも安く薬を購入できるようにすると約束しています。薬品の補助金制度であるPBS(医薬品給付制度)で患者が負担する金額の上限を、インフレによるコスト上昇にもかかわらず1年間凍結します。老齢年金の受給者などコンセッションカードの保有者については、負担の上限を5年間凍結します。

チャーマーズ蔵相はPBSを通じて処方薬を購入する場合、「今年そして来年と、31.60ドル以上支払う人は誰もいなくなります」と述べました。

さらにメンタルヘルスに3億6100万ドルを投じます。この中には、5億8850万ドルを投じて、15万人に提供されるメンタルヘルスの新しい全国的な無料デジタルサービスも含まれます。

政府はまた、一定の種類の心臓疾患や乳がんの治療法など、PBSやRPBSの対象となる薬品や治療リストの追加や改正に、今後5年間で34億ドルを投じます。
女性の健康

連邦予算案では、女性の健康に1億6000万オーストラリアドル以上が割り当てられました。

このうち5000万ドル以上がマタニティケアに、4900万ドルが子宮内膜症などの複雑な症状の治療に投じられます。

流産に苦しむ女性とその家族の支援にも資金が拠出されます。

さらに今後2年間に100万ドルを投じ、職業訓練コース「更年期管理(Managing Menopause)」を受講する医療従事者を支援します。
一部の求職者

労働能力に制限があり、週当たりの労働時間が最長で14時間までの人は、2週間当たりの失業手当(JobSeeker)支給額が、こちらも引き上げられた光熱費補助と合わせると、55ドル増えます。

この改正により、受給者およそ5000人の支給レーㇳが引き上げられます。

住宅

州やテリトリー政府が公営住宅(social housing)の建設やホームレスの人へのサービス拡充を進めるための支援として、連邦政府は今後5年間に4億2300万ドルを投じます。

さらに立地の良い場所での住宅供給を増やすため、州・テリトリー政府向けに別途10億オーストラリアドルを割り当てます。

また融資として19億ドルを用意し、低所得者層向けの住宅建設を支援します。
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Cost of Living Secrets: Renting image

Cost of Living Secrets: Renting

SBS News

14/05/202419:39

スモールビジネス

100万以上のビジネスが光熱費のリベート325オーストラリアドルの対象になります。世帯向けのリベートよりも若干金額が高くなっています。

およそ400万のビジネスに対し、2万ドルの即時資産償却の期間を、2025年6月30日まで1年延長します。

高齢者

老齢年金の受給者やコンセッションカードの保有者は、PBS(医薬品給付制度)を通じて薬を購入する際の負担金額の上限が5年間凍結されます。

チャーマーズ蔵相はこれにより、老齢年金の受給者やコンセッションカードの保有者は必要な薬を購入する際に、7.70ドル以上支払うことはないと述べました。

これとは別に、新しい高齢者ケア支援として22億オーストラリアドルが割り当てられました。これには、自宅での新たな介護パッケージ2万4000件や、老後を自宅で過ごすために必要なシステムの改善が含まれます。
Prime Minister Anthony Albanese listens as Treasurer Jim Chalmers delivers the 2024/25 Budget
Prime Minister Anthony Albanese listens as Treasurer Jim Chalmers delivers the 2024/25 Budget Source: AAP / Lukas Coch
サツマイモ好きな人

店頭で安くサツマイモが買えるかもしれません。連邦政府がサツマイモにかかる農業税(agricultural levy)を改正し、一般的な税率を1.5%から0.5%に引き下げます。

インド国籍保持者

インド国籍を持つ新卒者や若いプロフェッショナルがオーストラリアで働きやすくなります。11月1日から新しいプログラム「MATES(才能ある若いプロフェッショナル向けの移動手配制度)」が始まります。

「MATES」の対象となるのはインド人で、指定された業界での技能や知識を持つ30歳までの卒業生や若いプロフェッショナル3000人が、オーストラリアで2年間働き生活できるよう支援します。

この制度には事前申請費用として25ドルが、その後申請費用として365ドルかかります。費用は今後インフレと連動して価格が変わります。

学生

事前に発表されていた、学費ローンの借り入れ金のインフレ調整でCPI(消費者物価指数)もしくはWPI(労働賃金指数)の低い方を適用する措置に加え、建設業で働く人を育成するため、8900万ドルを投じて授業料無料のTAFEとVETのコースを追加で2万件設けます。

大学へのアクセスを拡大するため、3億5000万ドルを投じて2025年1月から無料の大学コースを提供します。

通勤者

国内各地で公共交通機関の拡充が行われています。例えば、サンシャイン・コーストとブリスベンを結ぶ鉄道建設への拠出や、シドニー第二空港とほかの道路や鉄道の建設などシドニー西部でのプロジェクト、キャンベラでのライトレールの延伸、ビクトリア州での道路プロジェクト、西オーストラリア州でのメトロネットの鉄道信号プログラムなどがあります。

では「負け組」は?

ワーキングホリデー

中国、ベトナム、インド出身でオーストラリアのワーキングホリデービザを取得したい人は今年から、ビザを申請するために新たに設けられた抽選での事前申請プロセスを通過する必要があります。

事前申請には25ドルの費用がかかります。連邦政府はこの新しい制度により、対象となる国からの需要に応じビザ申請の処理時間を管理する一助になると説明しました。

大半の求職者

生活コストが上昇するなかで、生活に困窮する人や福祉団体からは複数回にわたり、政府に失業手当(JobSeeker)の引き上げを求める声が上がっていました。しかし、手当の引き上げは盛り込まれませんでした。
Queues outside a Centrelink
Some JobSeeker payments will be increased in the budget Source: AAP / Dan Peled
大学

規定に基づき、大学がそれぞれ受け入れることのできる留学生の数が制限されます。規定では、大学側が留学生のためにどれほどの滞在施設を建設したかなどが含まれます。

2025年2月1日から新たに全国学生オンブズマンが設置され、高等教育を受ける学生が教育プロバイダーへの苦情をこのオンブズマンに報告できるようになります。連邦政府はこのオンブズマンについての費用を2026/27年度から回収する方向で、その方法を探っていきたい考えです。

公共サービスの請負業者

連邦政府は政府が依頼するコンサルタント・請負業者・労働者派遣業者(labour hire)への支出を今後4年間で10億オーストラリアドル減らします。

連邦政府はまた、外部の労働力への支出を減らす政府の取り組みを公的サービスがどのようにして実現しているかを調べるため、その監査を委託します。

バルクビルドを利用する患者

患者負担のないバルクビルド(bulk billed)を利用する患者は、メディケアに負担額の支払いを請求できる期間が2年間から1年間に短縮されます。

連邦政府は請求できる期間を短くすることで、メディケアの制度におけるコンプライアンス違反や、詐欺により迅速に対応でき、また、2025/2026年度までの3年間で歳入が3360万ドル分増えるとしています。

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Published 17 May 2024 12:27pm
By Rashida Yosufzai
Presented by Junko Hirabayashi
Source: SBS


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